メンタルヘルス

Y社は従業員Xの復職を認めるべきか?

◆Y社は従業員Xの復職を認めるべきか?

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Y社は従業員Xの復職を認めるべきか

平成25年4月下旬、人事担当者のためのメンタルヘルス実践勉強会を行いました。

参加者は、企業の第一線で活躍する人事担当者たち。

具体的な事例をもとに、ワールドカフェ方式によるグループディスカッションを行いました。

ワールドカフェ方式とは、グループの組み合わせを変えながら、カフェのようにリラックスした状態でコミュニケーションを実現する手法です。

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課題「Y社は従業員Xの復職を認めるべきか。」

うつ病で休職している従業員について、いくつかの状況設定がなされており、その上で、会社として、復職を認めるべきか否かを検討する課題です。

従業員Xは、「就業可、残業不可、勤務軽減要す」の診断書を提出し、復職を希望した
従業員Xは、学生時代にも精神疾患の既往歴があった
従業員Xは、休職前、時間外労働がかなり多かった
Y社は、従業員Xと、休職中に必要なコミュニケーションがとれていなかった
Y社の産業医は、「復職はまだ早い」と言っている
間もなく休職期間満了の時期である

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まずは、課題を一読した後に、参加者たちに尋ねたところ、復職否定派が75%復職肯定派が25%でした。

そういう従業員は去っていただくべき、と考える人事担当者が多くを占めていました。

しかし

約60分のグループディスカッション終了後、あらためて参加者たちに尋ねたところ、復職肯定派が75%復職否定派が25%、その比率が逆転しました

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研修のための課題とはいえ、各社で、十分あり得る事例です。

狭い視野で考えてはいけません。

多くのことを総合的に考えた上で、復職させた場合、復職させなかった場合、この状況ではどうすべきかと考える必要があります。

就業規則の休職規定
労災保険の業務災害の認定基準
会社の安全配慮義務
過去の裁判例
退職させた後のリスク
復職させた後のリスク

会社として、うつ病にかかった従業員をとにかく退職させればいい、というものではありません。

また、従業員本人が復職したいと言うから、主治医が就業可能と言うから、だから復職させればいい、というものでもありません。

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この勉強会について、参加者から感想をいただきました

◆事例研究について

・復職肯定の考え方を知ることができてよかった。

・復職否定、肯定の賛否両方の考え方を整理した上で、結論を出すことが大切であると感じました。

・「安全配慮義務を果たせるかどうか」というのは、会社の「何となく復職させたい/させたくない」と言っている人に説得しやすい言葉だと思いました。

・精神障害の労災認定について、再度理解しなおさなければならないと感じました。

◆ワールドカフェ方式について

・ワールドカフェというディスカッション形式を初めて経験しましたが、非常に面白く、刺激になりました。

・ワールドカフェ方式がよかった。同じグループより、テーブルを回っていると活動的になる。

・自分の思いつかなかった考えをいろいろと知ることができました。

・自分では気づかないいろいろな視点を発見することができました。

・多くの事例を聞けたので、参考になりました。

◆自社の就業規則について

・あらためて就業規則整備の重要性を感じました。

・安心して働ける会社であることを他の従業員にアピールするという意味でも、復職規定は作っておいた方がよいと思いました。

平成25年5月6日

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うつ病で労災認定と傷病補償年金、解雇。

◆うつ病で労災認定と傷病補償年金、解雇。

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うつ病で労災認定された従業員を辞めさせたい」という話です。

業務災害により休業している従業員を、その間、解雇できないことはご存じですよね。

その例外として、療養開始から3年経過し、傷病補償年金を受けていれば、解雇が可能となります。

ところで、うつ病で労災認定されたときに、傷病補償年金が支給されることはあるのでしょうか・・・?

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労働基準法の内容の確認です。

業務災害により休業中の従業員は、労基法の解雇制限により、解雇できません。

例外として、解雇するには、以下の2通りです。

打切補償をする場合

打切補償とみなされる場合
(療養開始から3年経過し、かつ、傷病補償年金を受けている場合)

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「打切補償とみなされる場合」において、そもそもうつ病で傷病補償年金を受けることがあり得るのでしょうか・・

某労基署の担当者に聞いてみました。

現状では、「ほとんどあり得ない」ですって

傷病等級表に障害の状態が設定されていますが、うつ病などの精神障害は、比較的最近出てきた病気で、等級に該当するしないの明確な基準が、まだ存在しないとのこと。

そしてその病状については、主治医の判断にまかせるとことが大きい・・・

それでも、労基署は、きちんと、1年6ヶ月経過後、さらにその後1年ごとに、病状のチェックは行います。

以下、私の個人的想像ですが・・・

精神障害が業務災害として認定された件数自体、まだそれほど多くないので、ほとんど実績がない、ということなのでしょう。

主治医も、過去に傷病補償年金の事例がほとんどないとなると、その診断には、当然ながら、そのような診断は下しにくいと想像できます。

さらに、一般的に、主治医の意見は患者(労働者)よりなので、傷病補償年金に移行するとその患者(労働者)が解雇されるかもしれないとなると、そのような診断は下さないと想像できます。

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ちなみに、精神障害について「障害補償給付」はどうでしょうか・・・?

障害補償給付とは、治癒した後に障害が残った場合の給付です。障害の程度により、年金と一時金があります。

治癒して障害補償給付を受けるようになれば、労基法の解雇制限からはずれ、解雇することが可能となります。

障害補償給付も、(ごくごくまれな例外を除いて)あり得ません

精神障害についての治癒とは、病気の特性から、その症状が完全になくなったことをいい、障害が残ること自体あり得ないのです。

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それでは、実際に平均賃金の1,200日分を支払って、打切補償して解雇すればいいのではないか!とお考えですよね。

答えは「ノー」です

会社は、実務的には、打切補償を行うことはできないのです。

打切補償は、会社が、実際に「療養補償」等を行ったときに初めて打切補償を行うことができます。

普通の会社は、労災保険に加入して、労災申請して、労災保険から療養補償給付(治療っという現物給付)が支給されています。

会社が行う「療養補償」と、労災保険からの「療養補償給付」は異なるものなのです。

労災保険から療養補償給付がなされ、会社が直接に療養補償を行わないときは、会社は打切補償を行うことはできません。

労基法に打切補償って書いてあるだろう!とおっしゃるかもしれませんが、この条文は、実務上はほとんどあり得ない前提で、形式的に残っているにすぎません。

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よって、うつ病で労災認定された従業員に辞めていただくためには、うつ病が完全に治って復帰しするまで待たなければなりません。

又は、長々と断続的に休業が続く場合は、話し合い等により合意退職にもっていくしかありません・・・

それ以前の問題として、会社としては、うつ病で、労災認定されないように、労務管理を徹底すべきです。

平成23年にできた(新)労災認定の基準を正確に理解することが必要です。

↓ 精神障害の労災認定http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120215-01.pdf

特に以下の2点、しっかりと対策して下さい!

時間外労働

セクハラ・パワハラ

平成25年5月7日

社会保険労務士法人ケーズ・インテリジェンス

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